
美味しい料理をより魅力的に、美味しそうに写真に撮るには何が必要でしょうか。
まず写真が適度な明るさであること、色が綺麗であること、そして料理が魅力的に見える光の当たり方であることが大事です。
今回はストロボを1灯使って、料理の写真を美味しそうに撮影するコツをご紹介します!
自然光で撮ると
まず最初はパスタをテーブルにそのまま置き、露出オートで何もせず撮影してみます。

少し暗めで、色もあまり綺麗に出ていないイマイチな写真が撮れてしまいました。せっかくの美味しそうな料理なのに、これでは魅力が伝わってきませんよね。
撮影場所はカフェの店内。上からは天井に吊るされた白熱灯の光が当たり、横からは少し離れた場所にある窓からの自然光が弱く当たる状況でした。自然光が当たっている部分は少し青っぽく写り、自然光が当たっていない部分は白熱灯の光でオレンジ(アンバー)っぽく写っています。違う色の光が同時に当たっているため、それぞれの色が写真に出てしまっています。
ひとまず場所はそのままに、露出補正をして明るさを調整してみましょう。

明るくなり少し良くなりましたが、光の当たり方は変わらないのでいまひとつな仕上がりです。
露出の数値を見ると、
[ ISO1000 f/3.1 1/40秒 ]
になっています。少し暗い状況だったのでISO感度が上がりノイズが出やすく、絞りが開いているのでピントは浅く、シャッタースピードは遅いので手ブレやすいという中々厳しい設定です。
では次に、自然光が入り比較的明るい窓際に移動して明るさを確保しつつ、良い光の当たり方を試してみましょう。
窓際のテーブルに移動しました。カーテンのない窓から直射日光ではなく柔らかい光が入ってきている状況です。
ポイントその1 逆光で立体感を
料理の写真は光が正面から当たっている窓側からではなく店内奥側から窓の方に向かって撮り、光の当たり方を逆光気味の状態にするのがオススメです。逆光になることで立体感が生まれ、料理が美味しそうに写ります。

半逆光で艶やテカリも出て、立体的な表現になってきました。少し明るい状況になったので露出の設定も変わっています。
ポイントその2 返しで暗部を明るく
手前側が影になり暗いので、レフ板で光を返して明るくしましょう。
白い板を料理の手前側の影になっている部分に向かって立てました。この状態で撮影してみると…

手前側が少し明るくなりました!白い板が窓からの光を反射し、影の部分を弱く照らしてくれています。
このレフ板は白いものならなんでもOK。スチレンボードを立てるだけでも画用紙を立てるだけでも大丈夫です。
良い感じになってきましたが、お皿奥側の自然光の影の部分に白熱灯の色が出ているのが少し気になります。店内の照明を消してみましょう。

白熱灯による色被りがなくなり色が綺麗になりました。
ポイントその3 色被りを避ける
太陽光と白熱灯の組み合わせなど、色の違う光でのミックス光撮影はできれば避けるようにしましょう。色被りをなくした方が色合いが綺麗になります。
照明が消えた分少し影の部分が暗くなったので、もう少しプラス側に露出補正をしても良いかもしれません。
自然光でも光の当たり方が良ければここまで綺麗に撮れるということが分かりました。ですが、明るさが足りないと絞りが開いてピントが浅くなりすぎてぼんやりしまう、シャッタースピードが遅くなりブレやすい、ISO感度が上がりノイズが出てしまう…という欠点は解決できません。他にも直射日光が入る状況だと上手く撮れなかったり、良い時間を逃したり天気が悪かったりすると撮れないという欠点もあります。
もっとくっきりとした綺麗な画質で、時間を問わず綺麗に料理の写真を撮りたい……。そんな時は、ストロボの出番です!
ストロボを使って撮ろう!

まずはクリップオンストロボでオンカメラ(カメラホットシューに取り付けて)撮影をします。オンカメラ撮影は小さくて光量もあるi400やi40、i60Aがオススメです。
今回は小型で大光量、電波式レシーバー内蔵でオフカメラでも使えるi60Aを使用して撮影をしました。
オンカメラで天井・壁にバウンス
自然光での撮影と同じように、半逆光で柔らかい光を作るのが料理を綺麗に撮るコツです。
まずは白い天井や壁にストロボ光を当ててその反射の光で写真を撮る、バウンス撮影をしてみます。料理の後ろ側から光が降り注ぐように、ストロボのヘッドを天井に向けます。
ヘッドの向きに角度を付け、斜め後ろから光が当たるようにバウンスさせます。影側にレフ板を立て影を弱めます。


天井にバウンスさせることで光源が大きくなり、柔らかい雰囲気の写真が撮れました。2枚目の写真はレフ板の距離を1枚目より少し離し、影を残して立体感を出しています。
ふんわりとした写真にしたい場合天井バウンスはとてもオススメです!
ポイントその4 ストロボで綺麗な色を!
自然光だと明るく撮れない、はっきり撮れない、綺麗な色で撮れない時は、ストロボを使いましょう。
露出の設定に注目してください。ストロボ光は明るいのでISO感度を下げ、絞りを絞ることができました。自然光の時よりもノイズが減りピントの合う範囲も広がったので、はっきりとした写りになります。露出の設定が下がることで自然光の影響も受けなくなり、白熱灯の色被りもなくなりました。さらにストロボ光は一瞬の光なので手ブレの心配もありません。演色性が高いので色の表現もとても綺麗です。

光の角度が変わると立体感の表現も変わります。光源がどの位置にあるのか計算しながらヘッドの角度を調整しましょう。
試しにストロボのヘッドを手前に倒し、正面側から光が回るようなライティングにしてみます。

陰影がなく平面的で、立体感のない写真になってしまいました…。
料理の写真は陰影を付けることで美味しそうな写真になることがわかります。
少ない機材で手軽に綺麗に撮れて、でも奥が深いのが天井バウンスです。その料理にぴったりな光の角度を見つけられるように、ヘッドの角度を細かく変えて色々な光の当たり方を試してみましょう!
オンカメラでレフ板にバウンス
白い天井や壁がない時は、レフホルダーに取り付けたレフ板に光をバウンスさせるとバウンス撮影ができます。
半逆光になるように料理の後ろ側にレフ板を立て、レフ板に向かってストロボの光を当てます。レフ板は白を使うと柔らかくライティングすることができます。


2枚ともレフ板にバウンスしていますが、レフ板を置く位置を変えています。
1枚目は料理の斜め後ろ側、2枚目は横側に置いています。
高さのあるものは逆光にすると手前が暗くなりすぎてしまうことがあるので、レフ板を横側に置きサイド光(横からの光)にするのもオススメです。
1枚目の写真も悪くありませんが、2枚目のようにサイド光にすることで、カラメルの色を鮮やかに、印象的に表現できました。
オフカメラでトレーシングペーパーに透過
ここまでオンカメラで撮影してきましたが、ここからはストロボをカメラから離しオフカメラでライティングしてみます。
i60AをコマンダーAir10sとペアリングさせることで、カメラからストロボを離して光らせることができます。
そのまま光を当てると硬すぎるので、ストロボの前にスーパーレフホルダーにトレーシングペーパーを付けて垂らしたものを立て、光を透過させます。光源の位置は半逆光になるように、料理の斜め後ろ側に置きます。


バウンス撮影と違い光が被写体の方を向いているので、柔らかさの中に芯がある光になり料理に艶が出ました。
色鮮やかで光を感じる爽やかな印象の写真に変わりました。トレーシングペーパーとストロボの距離が近いと光が硬くなり、離れると柔らかくなるので、距離感を少し変えるだけでも印象が変わります。


角度が少し変わるだけで印象が変わります。色鮮やかで立体的な写りです。
トレーシングペーパー透過でテカリが出すぎてしまったり、もう少し柔らかさが欲しい時はストロボにアンブレラ(反射ホワイト)を付けると光が回り柔らかくなります。


柔らかで綺麗な写真に仕上がりました。
トレーシングペーパーを使うと手軽に大きな光源が作れるので、料理の撮影にはとてもオススメなアイテムです。
今回使用したストロボ・機材
今回使用したストロボはi60A。オンカメラでもオフカメラでも使用でき、小さいボディながら光量も大きいのでバウンス撮影でも心配がない頼もしいストロボです。
オフカメラ撮影で使用したコマンダーはAi10s。手元でストロボの光量調整ができ多灯ライティングでもスピーディーにセッティングができます。
ストロボやレフ板、トレーシングペーパーを立てるのに使用したのはスーパーライトスタンドとスーパーレフホルダー。カーボン製でとても軽く折りたたむとコンパクトになりますので、持ち運びに適しています。
アクセサリーのレフ板とアンブレラもニッシン製品を使用しました。
ニッシンストロボとアクセサリーで、美味しそうな料理写真の撮影にぜひ挑戦してみてください!
料理写真を美味しそうに撮るコツを手取り足取り学べる
「ストロボ講座BIZ」は次回
2019年8月28日(水)に開催予定。
撮影・執筆:えはらあい
(2019/05/31)